センター長あいさつ

宇都宮記念病院ではこの度、腎臓内科・外科により腎臓病を総合的に診療する施設として「腎・透析センター」を開設し、まずは2019年7月29日から外来透析を開始しました。9月からはオンラインHDFも導入して、より治療効果の高い透析療法を実施しています。現時点ではまだまだ患者さんを迎え入れる余地があり、今後より一層多くの患者さんに質の高い透析療法を提供していけるよう努めてまいります。また、血液透析に欠かせないシャント治療を開始します。

私は東京女子医大を皮切りにこれまで2000例以上のシャント手術を執刀してきました。シャントを長持ちさせるカテーテル治療(PTA)も加えて、日々の透析を安心して受けていただけるよう尽力します。さらには、腎不全患者さんにとってもう一つの腎代替療法である腎移植も開始します。私は腎移植の東西のメッカである東京女子医大と名古屋第二赤十字病院でスタッフとして勤務し、直近では栃木県内で唯一の腎移植施設である自治医大で中心的役割を担い、総数1000例以上の腎移植に携わってきました。宇都宮周辺だけでなく広く栃木県全域から患者さんが集まる施設にしていきます。

2019年10月1日
腎臓外科科長 腎・透析センター長
南木 浩二(なんもく こうじ)


腎・透析センター開設3周年を迎えて

2022年7月29日で当センター開設3周年を無事迎えることができました。これまでご協力・ご支援いただきました関係各位の皆様には心から感謝申し上げます。開設半年後にはコロナ禍になり、初めての経験や各種制限の中、3年間を振り返るとあっという間でした。しかしそんな中でも、当センターは全スタッフ協力のもと、着実に発展することができました。開設当初は前施設から引き継いだ透析患者様35人でスタートしましたが、これまでに累計136人の外来透析患者様にご利用いただきました。高齢や交通手段がないため通院困難な患者様用に無料送迎の提供、獨協医科大学病院や近隣の透析クリニックとの連携、ホームページの充実、当院での新規透析導入などが患者数増加につながりました。こうして外来患者数が増加すると、必然的に合併症などでの入院数も増加しました。当院の強みは、クリニックと違って入院病床があること、標榜が28科あって専門科が充実していること、積極的に救急を受け入れるなど大病院よりもフットワークが軽いことです。各専門の科に入院しながらの当院での透析継続が可能です。患者数の多い整形外科・脳外科・循環器内科などには他院の透析患者様も多数受診しており、手術での入院の際にはICUや2022年4月に稼働した入院透析室で術後管理も合わせての透析を受けていただきました(累計275人)。当センターが開設する以前では、こうした当院での治療を希望する他院の透析患者様の受け入れはお断りするしかなかったので、これまで限られた病院に行くしかなかった透析患者様にとって、微力ながらも貢献できたのではと自負しております。

当センターの強みは、透析患者様の命綱であるシャントの治療が手術からカテーテル治療(PTA)までのすべてを行える点です。当院の透析患者様はもちろんのこと、他院のシャントトラブルもご紹介いただけるようになりました。シャント手術は特殊性が高く、特に人工血管ともなると栃木県内でも限られた病院・医師にしか対応できません。また、PTAは今後さまざまな治療デバイスが登場し、より高度化・専門化が予想されます。この地域のシャントを守るため、今後も積極的に他院のシャントトラブルを引き受けて参ります。

また、2020年12月に宇都宮市内で初、栃木県内の大学病院以外で初の腎移植を実施し、以降この3年間で4例の生体腎移植を成功させました。末期腎不全イコール透析という概念を覆し、腎移植は希望さえすれば当院のような民間病院でも普通に受けられる一般医療だということを示しました。4人の腎移植患者様は全員無事透析を回避・離脱して、ドナー共々元気に退院し、現時点まで再入院もしていません。現在まで、自治医科大学から当院に移られた腎移植患者様と同様に、当センターの外来に通院して免疫抑制療法を受けています。今後は、大学病院のように他院から腎移植のご紹介をいただけるような移植施設に育て上げていきます。

現在、国内には約1300万人(成人の約13%)の慢性腎臓病患者がいます。その原因の多くは糖尿病・高血圧・加齢です。当センターにも他科や健診センターなど院内からのみならず近隣のクリニックからの紹介で、多くの慢性腎臓病患者様に通院いただいております。当センターでは原因疾患の治療に加えて、慢性腎臓病に対する新規薬を積極的に導入しており、末期腎不全への進展を可能な限り阻止しています。残念ながら末期腎不全に至ってしまっても、透析と腎移植のいずれかの選択肢をシームレスに提案してタイムリーに提供できる体制を確立しています。

以上のような当センターの特色を活かして、地域の皆様にとって心強い存在になれるよう日々精進して参りますので、今後ともご協力・ご支援の程、何卒宜しくお願いいたします。

2022年7月29日


腎・透析センター開設5周年を迎えて

2024年7月29日に当センター開設5周年を無事迎えることができました。3周年同様これまでご協力・ご支援いただきました関係各位、中でもご来院いただきました患者さんやご家族はじめ、患者紹介や受け入れいただいた医療施設、関連業者の皆様には心から感謝申し上げます。開設した2019年の翌年以降から猛威を振るったコロナ禍を乗り越え、当センターはさらに発展を続けています。

開設3周年以降から現在に至る2年間の中で特筆すべき出来事を以下に記します。

透析患者数の増加

5年前に35名でスタートしましたが、2024年5月の通院透析患者は100名に到達しました(累積では188名)。その後には近隣の透析施設閉院に伴い、46名の通院透析患者を受け入れました。そのため、透析ベッドを再増床しました。当院に入院した他の透析施設の患者に対する透析も累積し続けて、この5年間で477名になりました。

シャント治療の充実

臨床工学技士によるエコーでの狭窄の早期発見をPTA(バルーンカテーテル治療)につなげて、長期開存に努めています。学会認定医のみが使用できるステントや特殊なバルーンカテーテルによる治療、シャント手術を専門とする外科医による他では難しい人工血管の手術も可能なため、すべてのシャント治療を当センターで高水準に完結することができます。

腎移植実施の継続

2020年の第1例目以降、計9例の生体腎移植を積み重ねてきました。高齢や糖尿病の合併、夫婦間などややハイリスクではありましたが、全例が透析離脱して現在まで移植腎機能は良好に経過しています。いくつかの合併症はあったものの、速やかに対応して後遺症は残っていません。他院での腎移植患者合わせて16名が元気に当センターに通院しています。

腹膜透析の導入

血液透析と腎移植、そしてもう一つの腎代替療法(末期腎不全の治療)としての腹膜透析ですが、適応は限られるものの血液透析のような通院が不要なため、在宅療法として患者さんにとっては有意義な場合があります。当センターでは2024年内までに開始することとし、3つすべての腎代替療法を同等に開始して維持管理できる施設になります。

慢性腎臓病の積極的治療

当院では「健診センター」の利用者が多く、「尿蛋白」「クレアチニン高値」「eGFR低値」などの理由で、当センターでの2次検診に回されてくる場合が多くあります。当院の内分泌内科からは「糖尿病性腎症」が、循環器内科からは「腎硬化症」が紹介され、近隣の個人クリニックからの同様な紹介も増加してきました。慢性腎臓病の治療は、以前は原疾患の治療や生活習慣の改善ぐらいしかなかったものの、最近は新薬が次々と登場して悪化の抑制が期待できるようになり、当センターでは積極的に新規治療を取り入れています。

こうした取り組みにより、まずは慢性腎臓病の悪化をできる限り予防し、末期腎不全に至った場合にはその患者さんに合った腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)を提案していきます。これらすべてを単一施設内で完結して実施可能な施設は宇都宮市内には他になく、栃木県内でも大学病院以外では当センターのみであると自負しております。

わが国の高齢化は腎臓病患者にとってはより顕著で、特に頻回の通院を余儀なくされる血液透析患者が今後、いつまでどうやって治療を継続させていけるかの持続可能性が大きな問題になっています。そのため、当センターでは早くから患者さんのご自宅から当センターまでの送迎車のサービスを開始し、現在では半数以上にご利用いただいております。自宅生活困難者にはまず入院対応しながら介護サービスの準備をしていただき、移られた高齢者施設からも通院透析を継続してもらっています。こうした高齢透析患者には必ずしも透析効率ばかりを求めるのではなく、通院回数や透析時間を減らすことで通院と身体の負担を少しでも軽減できるよう努める場合もあります。そして人生最期の時が訪れたなら、入院だけの選択肢ではなく、病態によっては透析を見合わせて、在宅診療の協力も得ながら、自宅で看取った患者さんもいます。今後も多くの患者さんに通院いただく中で、通院できなくなったら終わりではなく、当センターでは患者さんの最期の時まで責任を持って診させていただきます。

今後さらに10年20年と、地域の皆さんにとってなくてはならない存在になれますよう日々ますます精進して参りますので、変わらぬご協力・ご支援を宜しくお願いいたします。

2024年7月吉日

スタッフ紹介

医師

宇都宮記念病院 副院長
腎・透析センター長
腎臓外科科長
南木 浩二(なんもく こうじ)

専門分野 腎臓病、透析療法、腎不全外科(シャントなど)、腎移植
出身大学 1993年 弘前大学卒業
1997年 弘前大学大学院博士課程修了
経歴 1993年4月~2001年3月 弘前大学第2外科 医員
1996年4月~1999年1月 岡崎国立生理学研究所 助手(研究留学)
2001年4月 東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター外科 助手
2008年4月 国際医療福祉大学熱海病院 移植外科 講師
2009年4月 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科
2010年4月 名古屋第二赤十字病院 移植外科 副部長
2013年4月 自治医科大学 腎臓外科 講師
2019年10月 現職、自治医科大学腎臓外科 非常勤講師(~2020年3月)
2021年4月 聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 非常勤講師
2022年6月 宇都宮記念病院 副院長就任
2023年4月 獨協医科大学 腎臓・高血圧内科 非常勤講師
資格 日本外科学会専門医・指導医
日本透析医学会専門医・指導医
VA血管内治療認定医(日本透析医学会・日本透析アクセス医学会)
日本移植学会移植認定医・代議員
日本臨床腎移植学会腎移植専門医
日本消化器外科学会認定医
厚生労働省臨床研修指導医
厚生労働省指定オンライン診療研修修了
腎臓リハビリテーションガイドライン講習会修了
医学博士
所属学会 日本外科学会
日本透析医学会
日本透析アクセス医学会
日本移植学会
日本臨床腎移植学会
日本腎臓学会
腎移植・血管外科研究会
日本腎代替療法医療専門職推進協会
日本遺伝カウンセリング学会
American Society of Transplantation
The Transplantation Society

腎臓内科
常勤医師
石光 晃(いしみつ あきら)

専門分野 腎臓病、高血圧、透析療法
出身大学 2016年 東北大学卒業
経歴 2016年4月 獨協医科大学病院 臨床研修医
2018年4月 同大 腎臓・高血圧内科レジデント
2021年4月 宇都宮記念病院 腎臓内科
2022年4月 獨協医科大学 腎臓・高血圧内科 助教、宇都宮記念病院 腎臓内科 非常勤
2023年4月 宇都宮記念病院 腎臓内科
資格 日本内科学会内科専門医
日本腎臓学会専門医
日本透析医学会専門医
医学博士
所属学会 日本内科学会
日本腎臓学会
日本高血圧学会
日本透析医学会

腎臓内科
非常勤医師
内田 大介(うちだ だいすけ)

専門分野 腎臓病、透析療法、感染症内科
出身大学 2006年 日本医科大学卒業
経歴 2006年4月 関東労災病院 初期研修医
2008年4月 横浜市立大学附属病院 第一内科(感染症内科)初期研修医
2008年10月 神戸大学病院 感染症内科 専攻医
2012年4月 聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科 助教
2013年8月 横浜市西部病院 腎臓高血圧内科 助教
2014年8月 聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科 助教
2015年4月 川崎市立多摩病院 腎臓高血圧内科 助教
2016年4月 稲城市立病院 腎臓内科 医員
2018年10月 稲城市立病院 腎臓内科 医長
2019年7月 宇都宮記念病院 腎臓内科 非常勤(~現在)
2021年4月 帝京大学医学部附属溝口病院 内科
資格 総合内科専門医
日本化学療法学会指導医
日本腎臓学会専門医
日本透析医学会専門医
日本感染症学会専門医
厚生労働省臨床研修指導医
医学博士
所属学会 日本内科学会
日本腎臓学会
日本透析医学会
日本高血圧学会
日本感染症学会
日本化学療法学会

腎臓内科
非常勤医師
阿部 誠(あべ まこと)

専門分野 腎臓病、高血圧、透析療法
出身大学 2016年 獨協医科大学卒業
経歴 2016年4月 獨協医科大学 臨床研修医
2018年4月 同大 腎臓・高血圧内科 レジデント
2019年4月 足利赤十字病院 腎臓内科
2022年4月 獨協医科大学 救命救急センター、宇都宮記念病院 腎臓内科 非常勤(~現在)
2023年4月 獨協医科大学 腎臓・高血圧内科 助教
資格 日本内科学会内科専門医
日本腎臓学会専門医
日本透析医学会専門医
医学博士
所属学会 日本内科学会
日本腎臓学会
日本高血圧学会
日本透析医学会
日本集中治療医学会

腎臓内科
非常勤医師
安藤 彩美(あんどう あやみ)

専門分野 腎臓病、透析療法
出身大学 2011年 聖マリアンナ医科大学卒業
経歴 2013年3月 聖マリアンナ医科大学 初期臨床研修終了
2013年4月 聖マリアンナ医科大学 腎臓高血圧内科
2014年8月 稲城市立病院 腎臓内科
2019年9月 井口腎泌尿器科・内科 新小岩
2020年7月 宇都宮記念病院 腎臓内科 非常勤
資格 日本内科学会認定内科医
日本腎臓学会専門医
日本透析医学会専門医

腎臓内科
非常勤医師
岡部 絵里子(おかべ えりこ)

専門分野 腎臓病、透析療法
出身大学 2003年 東京女子医科大学卒業
経歴 2003年5月 自治医科大学付属病院 内科研修医
2006年5月 自治医科大学付属病院 腎臓内科
2007年4月 古河赤十字病院 腎臓内科
2008年4月 自治医科大学付属病院 透析センター
2014年4月 自治医科大学付属病院 腎臓内科 副手
2015年4月 達生堂 城西病院 透析センター
2016年4月 達生堂 城西病院 腎臓内科・透析センター長
2023年4月 宇都宮記念病院 腎臓内科 非常勤
資格 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本腎臓学会専門医
日本透析医学会専門医

腎臓内科
非常勤医師
里中 弘志(さとなか ひろし)

専門分野 腎臓病、透析療法
出身大学 1997年 東京大学卒業
2004年 東京大学大学院博士課程修了
経歴 1997年5月 東京大学医学部附属病院 内科研修医
1998年4月 日本赤十字社医療センター 内科研修医
1999年4月 日本赤十字社医療センター 腎臓内科
2000年4月 東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科
2004年10月 Vanderbilt大学医学部生化学部門 Research Fellow
2007年7月 東京大学医学部附属病院 血液浄化療法部
2009年4月 東京大学医学部附属病院 臨床試験部 助教
2012年7月 獨協医科大学 循環器内科 学内講師
2020年2月 獨協医科大学 腎臓・高血圧内科 学内准教授
2022年7月 自治医科大学 腎臓内科学部門 准教授
2023年4月 宇都宮記念病院 腎臓内科 非常勤
2024年4月 自治医科大学 腎臓内科学部門 教授
資格 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本腎臓学会専門医
日本透析医学会専門医

看護師・看護助手・臨床工学技士・管理栄養士・理学療法士・薬剤師・事務を含めたスタッフ一丸で皆さんの治療を支えていきます。