透析治療を長期に受けられている患者さんに起こりやすい「2次性副甲状腺機能亢進症」について分かりやすく解説します。
私たちの体には、血液中のカルシウム濃度を一定に保つ働きを持つ「副甲状腺ホルモン」があります。しかし、腎臓の機能が低下すると、体内のカルシウムが不足し、逆にリンという成分が過剰に溜まってしまいます。すると、のど元の甲状腺の近くにある副甲状腺が「もっとホルモンを出してカルシウムを増やさなければ」と過剰に反応し、腫大してホルモンを分泌し続けてしまうのがこの病気です。腎不全とは関係なく生じる「原発性」では4つの副甲状腺のうち1つのみが腫大しますが、腎不全による原因では「2次性(または腎性)」と呼ばれて全身性のため、4つすべての副甲状腺が腫大する違いがあります。
この状態が続くと、ホルモンの命令によって骨からカルシウムがどんどん溶け出してしまいます。その結果、骨がスカスカになって痛みが出たり、骨折しやすくなったりします(骨粗鬆症)。さらに、骨から血液中に溶け出したカルシウムが血管の壁にこびりつき(動脈硬化)、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる心血管疾患のリスクも高まります。
初期には自覚症状がほとんどないため、気付かないうちに進行してしまうのがこの病気の怖いところです。そのため、定期的な血液検査でホルモンやカルシウム、リンの数値を細かくチェックすることが非常に重要です。
当院では、リンの吸収を抑えるお薬や、副甲状腺の働きを抑える最新の治療薬など、患者さんの状態に合わせた適切な治療を行っています。
2次性副甲状腺機能亢進症に対する外科的治療(副甲状腺全摘・前腕部分自家移植術)について
2次性副甲状腺機能亢進症の治療は、近年「カルシミメティクス(副甲状腺に直接作用してホルモンを抑えるお薬)」などの優れた薬物療法の登場により、まずは内科的にお薬でコントロールすることが主流となっています。
しかし、2025年に改訂された日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」では、長期間の治療によりお薬の効果が出にくくなった患者さんや、副甲状腺が大きく腫れてしまった患者さんに対して、副甲状腺ホルモンを確実かつ迅速に低下させられる「手術療法」の有用性が示され、改めて脚光を浴びています。
この手術は、過剰に働き過ぎている副甲状腺4つをすべて摘出し(全摘)、その一部を腕などの筋肉内に植え換える(前腕部分自家移植)という方法です。これにより、体に必要な最低限のホルモン分泌を維持しつつ、骨の痛みや骨折、深刻な動脈硬化のリスクを根本から抑えることが可能になります。
副甲状腺はのど元の非常に繊細な領域にあり、特に反回神経という声帯の動きを司る神経が近くを走行するため、手術操作により術後に声がかすれてしまう嗄声を生じてしまうことがあります。当院では術中神経モニタリングシステムを採用しており、見つけにくい反回神経をこの機器で確認しながら副甲状腺を摘出します。他にも術中術後には透析患者さんの病態に合わせた特殊な管理が求められるため、この手術を安全に行うには高度な専門知識と経験が不可欠です。しかし問題なのは、この病態を十分理解した上で、合併症を回避しながら的確に執刀できる外科医が全国的にも非常に少ないということです。
当センター長の南木は、この手術を世界で最も多く施行している名古屋第二赤十字病院をはじめ東京女子医大や自治医大で累計500例以上の執刀実績があり、この複雑な病態を深く理解し、的確な手術を提供できる全国でも数少ない外科専門医です。お薬でのコントロールが難しくなってきた患者さんは、どうぞ安心して当センターにご相談ください。内科と外科が緊密に連携し、最適な治療をご提案いたします。